日本では近年、地震や台風などの自然災害が度々発生しています。
万が一、取引先が被害を受けた場合、会社として見舞金を支払うことがあるかもしれません。
今回は、“会社へ支払う場合”と“役員や従業員へ支払う場合”を例に災害見舞金についてご紹介します。
“災害見舞金”とは?
火災や地震などの被災者に対して、地方自治体や企業・個人から贈る見舞金を一般的に“災害見舞金”といいます。
ここで、会社が取引先に対して香典などの慶弔費、禍福に対する見舞金等を支払った場合は、通常、交際費等に該当します。
しかし、平成7年の阪神・淡路大震災を契機として災害見舞金の取り扱いが見直され、災害によって被害を受けた取引先等に見舞金を支出する場合、その災害見舞金で一定のものは交際費等に該当しないとされました。
交際費等に該当しない災害見舞金とは?
災害見舞金が交際費等に該当しない要件として、その支出が以下の目的等であることが必要とされます。
①被災前の取引関係の維持、または回復を目的として、取引先の復旧過程において支出されるもの
②災害見舞金、事業用資産の供与は災害発生後相当の期間内(※)に支出すること
※災害発生後相当の期間とは、災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程期間を指します。
災害見舞金として交際費等に該当せず計上できる金額は、取引先の被害状況や取引の状況などを勘案し、それ相応の災害見舞金であれば特に明確な上限はないと考えられます。
また、災害見舞金については、領収書の発行を求めることが難しいケースがほとんどでしょう。
そのため、領収書を求められない場合には、帳簿などに最低でも『①支出先の名称や所在地、②支出した年月日、③金額』を記載しておくことが必要になります。
法人の場合、交際費等の損金算入に一定の規制がありますので、会社として見舞金を支払うことがあった場合には、交際費等に該当しない要件を満たすかどうかを検討します。
取引先の役員や従業員等へ見舞金を贈る場合
一方、会社ではなく、被災した取引先の役員や従業員等の個人に対する災害見舞金は、交際費等とされます。
会社に対する災害見舞金は、慰安・贈答のための費用というよりも“取引先の救済を通じて自社の損失を回避するための費用”という意味合いがあるためです。
また、会社が不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に自社製品等を提供する場合に要する費用は、人道的見地・社会的要請に基づくものとして、交際費等には該当しません。
取引先が万が一の災害によって被害を受けてしまった場合の災害見舞金について、その取引先の範囲や目的・期間などによって取扱いが異なっていることを覚えておくと良いでしょう。
ご不明な点がありましたら、お近くの専門家にご相談ください。
※本記事の記載内容は、執筆日現在の法令・情報等に基づいています。
本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。
執筆者:弁護士小野智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。
また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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